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ゆきのよる
雪の夜
小林 多喜二
線上閱讀小林 多喜二《雪の夜(ゆきのよる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,967 字 · 31 頁
この髪ずウと前のよ」
「……うん」龍介は髪結賃はいくらだ、と訊ねようと思った。それぐらいなら出してやってもいい気がした。
「ね、上るだけの金がなかったら髪結賃だけでもちょうだいよ……三十銭」女はそう言ってぎこちなく笑った。そして身体をちょっと振って、外方を見た。
彼はせっかくの気持がこじけて、イヤになった。その時、家の前を四十ぐらいの貧相な女が彼の方を時々見ながら行ったり来たりしているのに気づいた。龍介は女に、「ない。また来る」そう言って、戻った。ほかの人にこんなところを見られたくなかったからだった。龍介はちょっと来てから道ばたの雪に小用を達した。用を達しながら、今の家の方を見た。往来をウロウロしていた四十恰好の貧相な女がさっきの女と、家の側の薄暗いところに立って話をしていた。年老った方の女が包みから何か出して相手に渡した。若い方はじいとうつむいていた。しばらく何か話していた。
――龍介には分った!
女のおっ母さんだったのだと思うと、彼は真赤になった。そして急いで次の通りへ出た。
次の晩、龍介はもし女がいたら髪結賃をやろうと思って、そこを通った。蟇口から三十銭出すと、手に握って持った。