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ゆきのよる
雪の夜
小林 多喜二
線上閱讀小林 多喜二《雪の夜(ゆきのよる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,967 字 · 31 頁
――俺はいったい何がしたいんだろう、と考えた。しかし分らなかった。分らない? フンこんなばかな理窟の通らない話があるか、そう思い、龍介は独りで苦笑した。
龍介は街に入ると、どこかのカフェーに入って、Sに電話をかけてみようと思った。が彼の通ってゆく途中の一軒一軒が、彼を素直な気持で入らせなかった。結局、彼は行きつけの本屋に寄って、電話を借り、Sにかけた。交換手がひっこんで、相手が出る、その短かい間、龍介は「いてくれれば」という気持と「かえっていないでくれれば極りがつく」という気持を同時に感じた。相手が出ぬ前、受話機をかけてしまうかと思い、ためらった、がその時電話口にSの妹が出た。Sはいなかった。彼はがっかりした。今晩はまただめになったと思った。
本屋を出たとき龍介は、ギョッとした。――恵子だ! 明るいところからなので、視覚がハッキリしなかった。が、電気のようにビリンとそういう衝撃が来た。龍介には見なおせなかった。見なおすよりまず自身を女からかくす、それが第一だった。彼は暗がりへ泥濘をはね越すように、身を寄せた。――が恵子ではなかった。ホッとすると、自分が汗をかいていたのを知った。