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ゆきのよる
雪の夜
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《雪の夜(ゆきのよる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,221 字 · 23 頁
瞳を勝山通のアパートまで送って行き、アパートの入口でお帰りと言われて、すごすご帰る道すうどんをたべ、殆んど一文無しになって、下味原の家まで歩いて帰った。二人の雇人は薄暗い電燈の下で、浮かぬ顔をして公設市場の広告チラシの活字を拾っていた。赤玉から遠のこうと、なんとなく決心した。
しかし、三日経ってまた赤玉へ行くと、瞳は居らず、訊けば、今日松竹座アへ行くいうたはりましたと、みなまできかず、道頓堀を急ぎ足に抜けて、松竹座へはいり、探した。二階にいた。松本と並んで坐っていた。松本の顔はしばしば赤玉に現われていたから、見知っていた。瞳に通っていた客だから、名前まで知っていた。眉毛から眼のあたりへかけて妙に逞しい松本の顔は、かねがね重く胸に迫っていたが、いま瞳と並んで坐っているところを見ると、二人はあやしいと、疑う余地もなく頭に来た。二階へ駆けあがって二人を撲ってやろうと、咄嗟に思ったが、実行出来なかった。そして、こそこそとそこを出てしまった。
翌日、瞳に詰め寄ると、古くからの客ゆえ誘われれば断り切れぬ義理がある。たまに活動写真ぐらいは交際さしたりイなと、突っ放すような返事だった。