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ゆきのやどり
雪の宿り
神西 清
線上閱讀神西 清《雪の宿り(ゆきのやどり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,995 字 · 51 頁
あの人の風狂には、何か胸にわだかまっているものが迸出を求めて身悶えしているといった趣がある。気の毒な老人だ。だがその一面、狂詩にしろ奇行にしろ、どうもその陰に韜晦する傾きのあるのは見逃せない。俺にはとてもついて行けない。……
「そこで山外の仏法はどうか。これは俺の知らぬ世界だから余り当てにはならぬが、どうやら人物がいるらしい。『祖師の言句をなみし経教をなみする破木杓、脱底桶のともがら』を言葉するどく破せられた道元和尚の法燈は、今なお永平寺に消えずにいるという。それも俺は見たい。応永のころ一条戻橋に立って迅烈な折伏を事とせられたあの日親という御僧――、義教公の怒にふれて、舌を切られ火鍋を冠らされながら遂に称名念仏を口にせなんだあの無双の悪比丘は、今どこにどうしておられる。それも知りたい。叡山の徒に虐げられて田舎廻りをしている一向の蓮如、あの人の消息も知りたい。新しい世の救いは案外その辺から来るのかも知れん。だがこれも今のところ俺には少しばかり遠い世界だ。……
「方々見廻しては見たが、まあ現在の俺には、諦めて元の古巣へ帰るほかに途はなさそうだ。それそれそなたの主人、一条のおやじ様の書かれた本にもあるではないか。