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ゆきのやどり
雪の宿り
神西 清
線上閱讀神西 清《雪の宿り(ゆきのやどり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,995 字 · 51 頁
から、松王様を蔭凉軒に附けられたものでございます。いやはや何と申してよいやら、浅ましいのは人の世の名利争いではございますまいか。これが畠山殿の御相続争いと一つになって、この応仁の乱れの口火となりましたのを思えば、その陰にしいたげられて、うしろ暗い企らみ事の只のお道具に使われておいでの松王様のお身の上は、なかなかお痛わしいの何のと申す段のことではございません。
このたびの大乱の起るに先だちましては、まだそのほかに瑞祥と申しますか妖兆と申しますか、色々と厭らしい不思議がございました。まず寛正の六年秋には、忘れも致しません九月十三日の夜亥の刻ごろ、その大いさ七八尺もあろうかと見える赤い光り物が、坤方より艮方へ、風雷のように飛び渡って、虚空は鳴動、地軸も揺るがんばかりの凄まじさでございました。忽ちにして消え去った後は白雲に化したと申します。そのとき安部殿(在貞)などの奉られた勘文では、これは飢荒、疾疫群死、兵火起、あるいは人民流散、流血積骨の凶兆であった趣でございます。当時、何ぴとの構えた戯れ事でございましょうか、天狗の落文などいう札を持歩く者もありまして、その中には「徹書記、宗砌、音阿弥、禅竺、近日此方ヘ来ル可シ」