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ゆきやなぎ

雪柳

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《雪柳(ゆきやなぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 頁

青空文庫

――これ、まだ化けては不可ない――今は真昼間だ。見れば川幅も広くなり、鉄橋にかわって、上の寺の樹蔭も浅い。坂を上った右手に心覚えの古樫も枝が透いた。踞んで休むのは身は楽だけれども、憩うにも、人を待つにも、形が見っともない、と別嬪の朋友に、むかし叱られた覚えがある。そこで欄干に凭れかかって煙草を――つい橋袂に酒場もあるのに、この殊勝な心掛を刎散らして、自動車が続けさまに、駆通る。

解った。いやしくも大東京市内においては、橋の上で煙草を喫む時世ではないのである、と云うのも、年を取ると、口惜いが愚痴に聞える。

ふけた事をいって、まず遊ばない算段をしながら、川添の電車道を、向う斜めの異な横町へ入って行く。……

いきなり曲角の看板に、三業組合と云うのが出ている。路地の両側の軒ごとに、一業二業、三業の軒燈が押合って、灯は入らないでも、カンカン帽子の素通りは四角八面に照らされる。中にも真円い磨硝子のなどは、目金をかけた梟で、この斑入の烏め、と紺絣の単衣を嘲るように思われる。

立込んだ家続だから、あっちこち、二階の欄干に、紅い裏が飜り、水紅色を扱った、ほしものは掛っていても、陰が籠って湿っぽい、と云う中にも、掻巻の袖には枕が包まれ、布団の綴糸に、待人の紙綟が結ばっていそうだし、取残した簾の目から鬢櫛が落ちて来そうで、どうやら