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らいほうとうものがたり
雷峯塔物語
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《雷峯塔物語(らいほうとうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,606 字 · 45 頁
西湖の西北の空に鼠色の雲が出て、それが陽の光を遮っていた。東南の湖縁の雷峯塔のあるあたりには霧がかかって、その霧の中に塔が浮んだようになっていた。その霧はまだ東に流れて蘇堤をぼかしていた。眼の下の孤山は燻銀のくすんだ線を見せていた。どうも雨らしいぞ、と思う間もなく、もう小さな白い雨粒がぽつぽつと落ちてきた。許宣は四聖観の簷下へ往って立っていたが、雨はしだいに濃くなってきて、雨隙がきそうにも思われなかった。空には薄墨色をした雲が一めんにゆきわたっていた。許宣はしかたなしに鞋を脱ぎ襪も除って、それをいっしょに縛って腰に著け、赤脚になって四聖観の簷下を離れて走りおりた。
許宣は湖縁から舟を雇うて湧金門へまで帰るつもりであった。不意の雨に驚いて濡れながら走っている人の姿が、黒い点になってそこここに見えた。湖の中にも小舟が左に右にあたふたと動いていた。それは皆俗に杭州舟と言っている笘を屋根にした小舟であった。その小舟の中に舳を東の方へ向けて老人が艪を漕いでいる舟があって、それがすぐ眼の前を通りすぎようとした。許宣はどの舟でもいいから近い舟を呼ぼうと思って、その舟に声をかけようとしたところで、どうもその船頭に見覚えがあるようだから、竹子笠を冠っている顔に注意した。