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ろはんせんせいとかがく

露伴先生と科学

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《露伴先生と科学(ろはんせんせいとかがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,198 字 · 15 頁

青空文庫

丁度その頃私は十年来の雪の結晶の研究が一段落ついたので、その綜合報告を中央気象台でしたことがある。その報告が『気象集誌』の特輯号として出たのが、たしか昭和十三年の春であった。露伴先生はその頃、しきりと科学書を読んでおられたそうである。『露伴先生近況』によると、岡田博士の『気象学』や私のこの『雪の結晶の研究』などを読まれ、特に原子物理学には興味をもって、菊池教授の『原子核及び元素の人工転換』のような専門書まで読破されたそうである。「専門ちがいだからなかなか手軽には読めぬ」といいながらも、菊池教授のこの本を二週間くらいで読了された。まことに驚くべきことであって、物理出の理学士でもそれくらいはかかる本なのである。いくら露伴先生でも、菊池教授のあの本をとにかく読了するまでに理解されたことは、一寸考えられないことであった。ところが今度小林君にきいた話では、先生は『理化学辞典』だの各種の化学の本なども届けさせておられたそうである。高等学校時代に、一々の言葉を哲学辞典でひきながら、畑ちがいの哲学書に熱中していた頃のことをふと思い出したが、先生には、七十歳をとっくに越してからもなお、青年の日々の若々しい情熱がつづいていたのであろう。