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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《青べか物語(あおべかものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 頁

青空文庫

「こんな砂がな」倉なあこは跼んで、水の中から砂を掬いあげ、掌の上へひろげてみながら云った、「おどろいたもんだな」

「だろうって」と富なあこが考えぶかそうに云った、「おらも初めはびっくりしたもんだ、こんな砂っ粒が生きているなんてよ、な」

「そうは思えねえもんな」

「知らねえ者は極楽よ」と富なあこは溜息をついた、「おらもそうとわかるまではなんとも思わなかったっけだ、けれどもわかってみると粗略にゃできねえと思った、ほんとだぜ、そんなに見えていて」と彼は倉なあこの掌上にある砂へと顎をしゃくった、「それでおめえ、ちゃんと生きてるんだからな」

「うう」と倉なあこが云った。

「生きているばかりじゃねえ」と富なあこが云った、「だんだんと大きくなりながら、川上のほうへのぼってゆくんだから、だんだんとな、どこからそんな知恵を絞り出したもんか、考げえてみるとびっくりするばかりだぜ」

「うう」と云って、倉なあこは、掌の上の砂を指で撫でた。

さざ波もたたない静かな海面のどこかで、魚のはねる水の音がし、二人は話しながら、磯のほうへ戻っていった。

もくしょう

元井エンジは葛西汽船の七号船の水夫であった。