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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《青べか物語(あおべかものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 頁
そのころでも、鮭くらい大きい鱸は、東京の料亭などへ持ってゆくと、六か七、うまいときには一〇くらいになるとのことで、いつもふところの寒い私も、そういう幸運にめぐりあいたいものと思い、何回となく干潟を歩きまわったものであるが、ついに一度もまぬけな鱸に出会うことはなかった。
さてその日、――私は私の青べかを流し放しにして、汐の中で横になり、「青巻」という本を読んでいたが、読み飽きて、ふと気がついてみると、いつか汐が干てしまい、青べかは砂上に坐っていた。私は本を置いて起き直り、あんこだまと魚煎餅を喰べ、なまぬるくなった茶を飲み、暫くぼんやりしていてから、ひとつ貝でも採ってやろうか、と独り言を呟いた。――断わっておくが、そのとき私は浜の制度についてなにも知らなかった。その沖が貝の活け場であることも、「ころがし」のことなども知らなかった。そうして青べかからおりて、なんの目算もなく干潟の砂を掘ってみると、なんと、拳くらいの大きな赤貝が幾らでも出て来た。
「すげえや」私は胸をおどらせながら叫び声をあげた、「こりゃあすげえや」
私は昂奮し、躯じゅうに幸福感が満ち溢れるのを感じた。