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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《青べか物語(あおべかものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 頁

青空文庫

洗い場の騒ぎはなお続いてい、長の叫び声が、その騒ぎを縫うように聞えた。よせ、やめろ、と長は叫んでいた。先生が怒るぞ、――よさねえか、先生が来るぞ、――私は事の意外さにとまどった。青べかをもっとも軽侮していたのは長であった。それがまだ三本松の脇の道傍で、舟底を上に干されていたとき、長は鼻柱に皺をよらせて「あのぶっくれ舟」と云い、見るのもいやだというふうにそっぽを向いた。その日の騒ぎも、おそらく長が音頭取りだろうと思っていたのである。――しかしそうではなかった。長はかれらの暴力から青べかを護ろうとしているのだ。私はとまどい、そうして少しばかり感動した。

「まあおちつけ、用心しろ」と私は自分に云った、「そうやすやすと感傷的になるな、長はしたたか者だぞ」

騒ぎがしずまり、悪童どもは去った。そろそろ暗くなりはじめたころ、もういいだろうと思って、私はようすを見るために土堤へ出ていった。ずいぶん石を投げつけたようだし、「ひっくら返す」と云っていたそうで、どんなことになっているか、その場へいって見るまではちょっと不安な気持だった。

堤へ登ってみると、舟はなかった。