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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 頁
老年の教授達はズボンに手を突っ込んだまま、せわしく足踏みしていた。例年より冷え方がひどく、ことしは明治何年以来の寒さだと言うことだった。どうやらストーヴに故障があるらしかった。そんな寒い部屋のなかで、殆んど朝から夕方まで坐りずめで、教授も容易な辛抱ではなかった。そのせいか、会議は実にあっけなく早いスピードで進行して行った。毎年、一人の生徒の及落を決めるために、まる半日潰れてしまうようなことがあった。が、ことしは一人の生徒に十分も手間どるようなことはなかった。いちいちその生徒の一生の運命まで考えていたら、きりの無いところである。毎年懐疑的な教授も今日は点数という極めて合理的な決定法に絶対の信用を置いた。
豹一、赤井、野崎の三人の及落決定も十分とは掛らなかった。三人一束に審議されて、簡単であった。欠席日数が三人とも規定を超過していると聴いて、さっさと小用に立った教授もあるくらいだった。おまけに、品行もわるく、成績不良だった。ことに、独逸語の成績がひどく悪かった。
「どうですな、Hさん」誰かが独逸語のH教授にそう訊いた。H教授が、「もう一年僕の講義を聴かしますかな」