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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 頁
停留所まで来たが、電車を待つ気になれなかった。ただなんということもなしに、当もなく電車道を歩いて行った。寒いのでせかせかと足早に歩いたが、不正と闘ったという心の張りがちっとも感じられなかった。
(到頭失業者になったぞ)という想いが追いかけて来た。天王寺西門前からやっと西行きの電車に乗った。が、一つ停留所を過ぎただけで、もう恵美須町の終点だった。乗換券も貰わずに降りて、新世界へ行った。活動写真を見たりして時間を潰しているうちに夜になった。恵美須町から電車に乗り、日本橋筋一丁目の乗換場所で降りて、谷町九丁目へ行く電車を待っているうち、ふと気が変って足は千日前の方へ向いた。なんとなく家へ帰るための電車を待つ気がしなかったのである。千日前から法善寺境内にはいると、いきなり地面がずり落ちたような薄暗さであった。献納提灯や燈明の明りが寝呆けたように揺れていた。豹一はなにか暗澹とした気持になった。
境内を出ると、貸席が軒を並べている芝居裏の横丁だった。胸に痛いようなしょんぼりした薄暗さだと思われた。
「ちょっと、ちょっと、洋さん」声掛けられて急いで通り抜けて行った。