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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 頁
転んでもただでは起きぬ野瀬のことやから、なんぞまたぼろいことを考えとるのやろと言うことになった。その通りである。
安二郎の隣に万年筆屋が住んでいた。一間間口の小さな家だったが、代々着物のしみ抜き屋だったが、中学校を出たそこの息子の代になると、万年筆屋の修繕兼小売屋へハイカラ振って商売替えすることになり、安二郎にその資本三百円の借用を申し込んだ。安二郎はその家が借家ではなく、そこの不動産だと確かめると、それを抵当に貸し付けた。その金がいつの間にか二千五百円を出る位になった。隣近所でも容赦はせぬと、安二郎は執達吏を差し向けて、銭湯へ出掛けた。万年筆屋が銭湯へ呶鳴り込んで来たが、安二郎は、「あんた、人の金ただ借りれると思たはりまんのか」と頭にのせた手拭をとってもう一つ小さく畳むと、また頭の上にのせた。その晩万年筆屋は立ち退いた。安二郎はこの間口一間の家を改造するために、大工を雇ったのである。
先ず二階の壁を打っ通して扉をつくり、自分の家の二階とそこの四畳半の部屋との間を廊下伝いに往来出来るようにした。階段はそのままに残して置き、店の間の土間にはただテーブルを一個と椅子二個ならべ、テーブルの上にはベルをそなえつけて、「御用の方はこのベルを押すこと」