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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 頁
思わず微笑が泛んで来るぐらいだった。が、豹一は周章てて渋い顔になると、
「候補者は誰と誰ですか?」と訊いた。
「君のクラスの沼井と、それから四年F組の播摩だ」
沼井と聴いたからにはもう豹一は平気で居られなかった。いきなりぶるっと体が顫えた。
(なあんだ。沼井も学資を施して貰うのか。沼井が落第して、俺が合格するとなればこんな気持の良いことはない)そう思うと、元来が敏感に気持の変り易い彼はふと高等学校へ行ってみようかという気になった。母親に学資を苦面させるわけではない。それに、どうせ中学校を出ても、家でこき使われるか、デパートの店員になるよりほかはないのだ。(塾へはいれば安二郎の顔を見なくても済むのだ)それで肚が決った。しかし彼は即座に、じゃあ、そうさせていただきますとは言わなかった。行きたくないと言って置きながら、直ぐ掌をかえすように、行かせて貰いますと飛びつくのは余りに不見識で、浅ましい。
「校長先生のお言葉ですし、一ぺん家の者に相談してみます」こう言った。ここらに豹一が余り人から好かれないところがある。しかし、本当に母親だけに相談する義務はあった。
「そうか。