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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 頁
「実はこれは僕の発案なんだ。実物の人間が立っているところが味噌なんだが、かわり番に立つことにして、いよいよ僕の番になって見ると、とてもこんな恰好で立てやしないんだ。が、発案した以上、立たぬ訳にはいかないじゃないか。それで立つことは立ったが、ドアを閉めて誰もはいれぬようにしてやったんだ。寒いよ。煙草あるか」
豹一は吹き出してしまった。こんな痩せてひょろひょろした虎退治があろうかと、朝からの不機嫌が消し飛んでしまった。煙草を渡すと赤井は、
「封を切ってないね」
豹一は幾らか恥しかった。ただなんとなく持っているだけで、吸う気になれなかったのである。照れかくしに、
「虎はどうした?」と言うと、
「デコが間に合わなかったんで、立っている人間がしばしばうおーッと唸る仕掛になっているんだ。妙なものを発案したもんだ」と苦が笑いをした。交替のものが来るまで動けないと言うので、豹一は、
「じゃ、また後で」
とそこを出た。寄宿舎を出ると、豹一は新築校舎の二階にある自分の教室へ行き、グラウンドに面した窓から仮装行列を見た。丁度豹一のクラスである文科一年甲組の仮装行列がはじまる前で、誰も教室にはいなかった。