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かばんのかい

革鞄の怪

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《革鞄の怪(かばんのかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,394 字 · 21 頁

青空文庫

私の窓にも一つ来た。

と見ると、板戸に凭れていた羽織袴が、

「やあ!」

と耳の許へ、山高帽を仰向けに脱いで、礼をしたのに続いて、四五人一斉に立った。中には、袴らしい風呂敷包を大な懐中に入れて、茶紬を着た親仁も居たが――揃って車外の立合に会釈した、いずれも縁女を送って来た連中らしい。

「あのや、あ、ちょっと御挨拶を。」

とその時まで、肩が痛みはしないかと、見る目も気の毒らしいまで身を緊めた裾模様の紫紺――この方が適当であった。前には濃い紫と云ったけれども――肩に手を掛けたのは、近頃流行る半コオトを幅広に着た、横肥りのした五十恰好。骨組の逞ましい、この女の足袋は、だふついて汚れていた……赤ら顔の片目眇で、その眇の方をト上へ向けて渋のついた薄毛の円髷を斜向に、頤を引曲げるようにして、嫁御が俯向けの島田からはじめて、室内を白目沢山で、虻の飛ぶように、じろじろと飛廻しにしていたのが、肥った膝で立ちざまにそうして声を掛けた。

五

少し揺るようにした。

指に平打の黄金の太く逞ましいのを嵌めていた。

肖も着かぬが、乳母ではない、継しいなかと見たが、どうも母親に相違あるまい。