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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

線上閱讀久生 十蘭《顎十郎捕物帳(あごじゅうろうとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,494 字 · 26 頁

青空文庫

「ねえ、仙波さん、あなたがぬすっとの用心棒をつとめていたとは、さすがのこの藤波も、きょうのきょうまで気がつかなかった」

顎十郎は、トホンとした顔つきで、

「手前がもそっと飲めばよかった、たア、いったいなんのことです」

「とぼけちゃいけねえ、なにを言ってやがる。こんなところでとぐろを巻いていて、夜番の眼をそらし、裏でこっそり金蔵を破らせるなんてえのは、たしかにうまい趣向。貴様らしい思いつきだ。今にして思いあわせると、以前ちょっと甲府で役についていたことがあるというだけで、その後、四五年、どこでなにをしていたものやら誰も知っているものがねえ。……縁につながる叔父の森川庄兵衛のところへフラリと舞いもどって、なにくわぬ顔で北町奉行所の帳面繰り。……江戸一と言われた捕物の名人が、ひと皮剥ぎゃア、金蔵破りの大ぬすっとの同類とは、こいつアよっぽど振ってる。……おい、仙波、永らくすっ恍けていやがったが、今度こそは年貢の納めどき、昔の誼みで、この藤波友衛が曳いて行ってやる。観念してお繩をいただけ」

顎十郎は、両手で泳ぎだし、

「じょ、じょ、冗談じゃない。……それは、なにかの間違い」