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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
線上閱讀久生 十蘭《顎十郎捕物帳(あごじゅうろうとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,327 字 · 43 頁
「江戸の御用聞はおっとりしているというが、ほんとうだ。……小火がでた松平越前の屋敷は、川ひとつへだてて、ちょうど金座のまむかいなんだが、お前は、はてな、とも思わないのか」
ひょろ松は笑って、
「川越しに、金座から放火でもしたわけでもありますまい、それが、なぜ妙なんで」
顎十郎は、たんねんに糸巻に凧糸をまきつけると、凧と糸巻を手に持って、
「……きのう金座から帰って、部屋で寝ころがっていたら、松平越前の厩番が遊びにきて、ゆうべの四ツごろ、行灯凧が厩の屋根へ落っこちてボウボウ燃えあがった。……早く見つけて大事にならねえうちに消しとめたが、もうすこし気がつかずにいたら、飛んだ大ごとになっていた。……おかげで、こちとらは、水だ、竜吐水だ、で、えらい骨を折らされた、と言っていた。……どうだ、ひょろ松、これでも妙だとは思わないか」
「へへえ、行灯凧がね……」
「わからなけりゃ、わからなくともいい……。おれは、これから松平越前の厩へ行って見るつもりだが、ちょいと話したいことがあるからといって、藤波を呼んで来てくれ。……おれからの呼びだしだといや、あいつも意地づくだから、かならずやって来るだろう」