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かぜ
風
壺井 栄
線上閱讀壺井 栄《風(かぜ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 38,702 字 · 78 頁
茂緒は茂緒で、恐縮しながら、
「あのう、東京駅で友だちをまってたものですから――」
そして手土産の煮干を出すと、はじめて分かったらしく、
「あら、あんた主人の妹さん!」
「はい。」
「わたしはまた、ごめんなさい、勘ちがいして。今日たのんだ女中さんが、早や来てくれたのかしらと思ったんですよ。それにしちゃあ、表から入ってくるなんて、様子がおかしいと思ったりして。失礼しました。さあさあ、寒かったでしょう。あったかいそばでも、とりましょう。」
座敷に通されて、ひとりになると、火鉢で手をあぶりながら茂緒は、兄にむかって何というべきかを考えていた。正直に、ありのままにふるまうのだと、母にはいいながら、ここではそれが通用しそうもなかったからだ。
――東京見物にきました。友だちと一しょに見物しますから、二三日宿をお願いします。
そうだ、そういおう、それなら嘘じゃないもの……。
ほっとしながらも茂緒の気もちはまた滅入りそうだった。修造は、なぜ迎えに出てはくれなかったのか。ただそのときの気まぐれで、まさか茂緒が上京するとも思わずにさそったのであろうか。いっそのこと、このまま会わずに帰ろうかと思ったりもしたが、翌日になると、澄江の手前もあって、兄の家にくすぶってもいられなかった。