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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
線上閱讀坂口 安吾《風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇(いずこへ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 頁
一見支離滅裂な喚きでも、真意の通じる陰謀政治家が発狂していないと断言したのは当然で、ほかの家族は発狂と信じていた。これも亦自然である。
やがて高木はほかの人達を退席させ、私と二人になって、私に死んでくれと言った。私が生きていると死にきれないと言うのであった。死ななければ、きっと、よぶ、と言った。その眼は狂い燃え、吐く息の悪臭はすでに死臭で、堪えがたかった。
高木は私を文学の上の敵としていた。狭い世界に突きつめて生きていたから、そういう感情の異常な激しさも仕方がない。語学でも分るように特異な頭脳であったが、週期的な精神錯乱のせいなどあって、構成や表現が伴わず、眼高手低、宿命的な永遠の傑れたディレッタントであった。私への愛と又憎しみを私はもとより知ってはいた。
「聴えないか。耳をよこせ」
高木の狂暴な眼が私をさがす。声が殆んど聞きとれない。私は彼の口へ耳をやらねばならないし、そうすると、世にも無残な悪臭でやりきれない。「死んでくれ。死ななければ、きっと、よぶ」必死に叫びつづける。肉体はもう死んでいるのだ。すでに死臭すら漂っている。今生きて、もがき、のたうって叫ぶのはこの男の霊気だけのようである。