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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
線上閱讀坂口 安吾《風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇(いずこへ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 頁
そして、その印刷した文字には「幸うすく」津世子は死んだと知らせてあった。「幸うすく」、あなたは、必ずしも、そうは思っていないだろうと私は思う。人の世の、生きることの、馬鹿馬鹿しさを、あなたは知らぬ筈はない。
けれども、あなたのお母さんは「幸うすく」そう信じているに相違なく、その怒りと呪いが、一人の私に向けられているような気がした。そして、私は泣いた。二、三分。一筋か二筋の、うすい涙であった。そして私が涙の中で考えた唯一のことは、ある暗黒の死の国で、あなたと私の母が話をして、あなたが私の母を自分の母のように大事にしてくれている風景であった。そして、私は、泣いたのだ。
私は、この尤もらしい顔附が切ない。こう書いてしまうと、これだけの尤もらしさになってしまう、表現のみじめさが切なく、馬鹿馬鹿しいのだ。そうかと云って、そうであるまいとすると、私はてんから、情熱と魂を嘲笑してしまうような気がする。私は果して書きうるのか。
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私はそのとき二十七であった。私は新進作家とよばれ、そのころ、全く、馬鹿げた、良い気な生活に明けくれていた。
当時の文壇は大家中堅クツワをならべ、世は不況のドン底時代で、雑誌の数が少く、原稿料を払う雑誌などいくつもないから、新人のでる余地がない。