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いずこへ

風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇(いずこへ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 頁

青空文庫

私は然し自信はなかった。ない筈だ。根柢がないのだ。文章があるだけ。その文章もうぬぼれる程のものではないので、こんなチャチな小説で、ほめられたり、一躍新進作家になろうなどと夢にも思っていなかった。

そのころ雑誌の同人六、七人集って下落合の誰かの家で徹夜して、当時私たちは酒を飲まなかったから、ジャガ芋をふかして塩をつけて食いながら文学論で徹夜した。その夜明け、高橋幸一(今は鎌倉文庫の校正部長)が食う物を買いに外出して、ついでに文藝春秋を立読みして、牧野信一が「風博士」という一文を書いて、私を激賞しているのを見出したのである。

人間のウヌボレぐらいタヨリないものはない。私はその時以来、昨日までの自信のないのは忘れてしまって、ほめられるのは当り前だと思っていた。そのとき二十六だった。七月頃であった。そしてその月に文藝春秋へ小説を書かされ、それ以来、新進作家で、私の軽率なウヌボレは二十七の年齢にも、つづいていた。

そのころ、春陽堂から「文科」という半職業的な同人雑誌がでた。牧野信一が親分格で、小林秀雄、嘉村礒多、河上徹太郎、中島健蔵、私などが同人で、原稿料は一枚五十銭ぐらいであったと思う。