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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
線上閱讀坂口 安吾《風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇(いずこへ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 頁
そのころ「桜」という雑誌がでることになった。大島というインチキ千万な男がもくろんだ仕事で、井上友一郎、菱山修三、田村泰次郎、死んだ河田誠一、真杉静枝などが同人で、矢田津世子も加わり、矢田津世子から、私に加入をすすめてきた。私は非常に不快で、加入するのが厭だったが、矢田津世子に、あなたはなぜこんな不純な雑誌に加入したのですか、ときくと、あなたと会うことができるから、と言う。私は夢の如くに、幸福だった。私は二ツ返事で加入した。
私たちは屡々会った。三日に一度は手紙がつき、私も書いた。会っているときだけが幸福だった。顔を見ているだけで、みちたりていた。別れると、別れた瞬間から苦痛であった。
「桜」はインチキな雑誌であったが、井上、田村、河田はいずれも善意にみちた人達で、(菱山は私がたのんで加入してもらったのだ)私は特に河田には気質的にひどく親愛を感じていたが、彼は肺病で、才能の開花のきざしを見せただけで夭折したのは残念だった。彼はすぐれた詩人であった。
インチキな雑誌であったが、時事新報が大いに後援してくれたのは、編輯者の寅さんの好意と、これから述べる次の理由によるせいだと思われる。