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いずこへ

風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇(いずこへ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 頁

青空文庫

私は女給と泊り歩いている私が、矢田津世子への復讐であるような心は、ミジンもなかった。私は今、すぐこの足で、矢田津世子を訪ねて、結婚しましょう、と言えば、結婚することもできるのだった。それは疑うべからざることで、そのことだけでは、一とかけの疑念も不安もなかったのだ。もとより、憎む時間はあった。然し、私があの人の影におびえて立ちすくむとき、私自身の恐怖の中には、あの人に苦痛と恥辱を与えたくない思いやりが常にこめられていたのだ。

同時に私はWを憎んでもいなかった。矢田津世子とW。矢田津世子と私。私の心には、この二つを対比し、対立させる考え方が欠けているか、或いは非常に稀薄であった。矢田津世子とW。私はそれを考える。最も多く考えた。然し、矢田津世子と私、という立場に対立させて考えてはいなかった。つまり、同一線上に二つを並べていなかったのだ。

私が矢田津世子と結婚する。すると、むしろ、私達は、彼女とWにハッキリ対立してしまう。結婚すれば、私は勝ちうる。果して、勝ちうるであろうか。私はむしろ、対立と、自分の低さ、位置の低さを自覚するばかりではないか。

私は然し、そのように考えていたわけではない。