輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
線上閱讀坂口 安吾《風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇(いずこへ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 頁
私は此処へ坐らされた瞬間からもう煙のような私、掴まえどころのない憂鬱と不安とに怯えきって縮んでいた。時々この広々とした板の上を白い看護婦達がスリッパを鳴らして通るのだが、私は眼を上げる気力さえ失うて今にも消滅するようであった。
春が近づいた頃私は辰夫の令兄から甚だ感傷的な、それはまるで小女雑誌の投書のような長文の手紙を受取っていた。それから一週間もして、辰夫は退院することが出来た。辰夫はある私鉄の改札掛となって、間もなく遠方へ越して行った。
一日私は広茫たる水田のほとりへ辰夫を訪れた。折悪しく辰夫は社用で不在だったが、あの神経質な又冷淡な母親を予想していた私は、そこに全く思いがけない物静かな、その温顔に神へのような深い感謝を私に浴せる老いたる母を見出して呆然としていた。私は田園の長い夜道を辿り乍ら、改めて歎息に似た自卑と共に、世に母親ほど端倪すべからざるものはないと教えられた。