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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
線上閱讀坂口 安吾《風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇(いずこへ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 頁
そのくせ常に苛々していた。それはただ肉慾がみたされない為だけのせいであり、常に男をさがしている眼、それが魂の全部であった。
私はアキをよびだして、海岸の温泉旅館へ行った。すべては私の思うように運んだ。私はアキを蔑んでいると言った。そしてこの気取り屋が畸形の醜女にすら羞しめられる女であることを見出した喜びで一ぱいだったと言った。そういう風に一度は考えたに相違ないのは事実であったが、それはただ考えたというだけのことで、私の情慾を豊かにするための絢であり、私の期待と亢奮はまったく好色がすべてであった。私は人を羞しめ傷けることは好きではない。人を羞しめ傷けるに堪えうるだけの自分の拠りどころを持たないのだ。吐くツバは必ず自分へ戻ってくる。私は根柢的に弱気で謙虚であった。それは自信のないためであり、他への妥協で、私はそれを卑しんだが、脱けだすことができなかった。
私は然し酔っていた。アキは良人の手前があるので夜の八時ごろ帰ったが、私はチャブ台の上の冷えた徳利の酒をのみ、後姿を追っかけるように、突然、なぜアキを誘ったか、その日の顛末を喋りはじめた。私はアキの怒った色にも気付かなかった。