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いずこへ

風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇(いずこへ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 頁

青空文庫

まもなく私と女は東京にいられなくなった。女の良人が刃物をふり廻しはじめたので、逃げださねばならなかったのだ。

私達はある地方の小都市のアパートの一室をかりて、私はとうとう女と同じ一室で暮さねばならなくなっていた。私は然しこれは女のカラクリであったと思う。私と同じ一室に、しかも外の知り人から距って、二人だけで住みたいことが女のねがいであったと思う。男が私の住所を突きとめ刃物をふりまわして躍りこむから、と言うのだが、私は多分女のカラクリであろうと始めから察したので、それを私は怖れないと言うのだが、女は無理に私をせきたてて、そして私は知らない町の知らない小さなアパートへ移りすむようになっていた。

私は一応従順であった。その最大の理由は、女と別れる道徳的責任に就て自分を納得させることが出来ないからであった。私は女を愛していなかった。女は私を愛していた。私は「アドルフ」の中の一節だけを奇妙によく思いだした。遊学する子供に父が訓戒するところで「女の必要があったら金で別れることのできる女をつくれ」と言う一節だった。私は、「アドルフ」を読みたいと思った。町に小さな図書館があったが、フランスの本はなかった。