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いずこへ

風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇(いずこへ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 頁

青空文庫

庄吉は転々と引越した。長くて半年、時には三月、酒屋、米屋、家賃に窮するからで、彼はシルシ半纏がいちばん怖しいのは、東京の四方八方に転々彼を走らせるいくらでもない借金が、そこのオヤジも小僧もたいがいシルシ半纏をきているからだ。おまけに自転車にのっている。風をきって彼めがけて躍りかかる如く見えるから自転車のシルシ半纏が恐怖のたねで、そこで彼は自動車にのって目的地へ走る、運転手に睨まれ、もじもじ恥にふるえながら目的地のアルジに車代を払って貰う、人生至るところただもう卑屈ならざるを得ない。おまけに金がかかる。お金持は自動車にのる必要などはないものだ。

彼の女房は彼の貧乏にあつらえ向きであった。貧乏を友として遊ぶていで、決して本心貧乏を好むわけではないけれども、自然にそうなった。それは庄吉の小説のためだ。

彼の小説の主人公はいつも彼自身である。彼は自分の生活をかく。然し現実の彼の生活ではなくて、こうなって欲しい、こうなら良かろうという小説を書く。けれども、お金持になって欲しい、などと夢にも有り得ぬそらごとを書くわけには行くものではなく、作家はそれぞれ我が人生に対しては最も的確な予言者なのだから、彼が貧乏でなくなるなどとは自ら許しあたわぬ空想で、芸術はかかる空想を許さない。