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かぜにのってくるコロポックル
風に乗って来るコロポックル
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《風に乗って来るコロポックル(かぜにのってくるコロポックル)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,458 字 · 39 頁
ホーレ!
と一声叫ぶと、思い切った勢で馬の背を叩きつけた。
不意を喰った馬は堪らない。土を掻いて飛び上ると、死物狂いになって馳け始めた。
小石だらけの往還を、弾みながら転がって行く車輪の響。馬具のガチャガチャいう音。
火花の散るような蹄の音と、巻き上る塵の渦巻の上に飛んで行く騒音の集団の真中に、豊坊は得意の絶頂で飛んで来る。来る! 来る! 来る!! そして一瞬の間にイレンカトムの目前を通ってしまった。
咽(む)せそうな塵埃(じんあい)の雲を透して、なおも飛んで行く豊坊の、小さい帽子に向って、イレンカトムは思わず、
「ウッウッーッ!」
と声を出しながら拳を握って四股を踏んだ。それから、溶けそうな眼をして、ソロソロと長い髭を撫で下した。
斯様にして、当分の間はイレンカトムも、仕合わせな年寄(エカシ)であった。
僅かの間に、豊坊の身なりはめきめきと奇麗になって来るし、馬の扱いは益々手に入って来る。
体もぐんぐん大きくなって、どことなく大人らしく成熟(ませ)た豊は、離れて暮さなければならないイレンカトムの心に、唯一の偶像であった。
実際、大胆で無智で、野生のままの少年は、その容貌なり態度なりに、一種の魅力を持っている。