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しょくま

食魔

岡本 かの子

線上閱讀岡本 かの子《食魔(しょくま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,911 字 · 74 頁

青空文庫

それは案外、甘いものであった。

「成程なア」

彼は、感歎して独り言をいった。

彼は盛に煮上って来るのを、今度は立て続けに吹きもて食べた。それは食べるというよりは、吸い取るという恰好に近かった。土鼠が食い耽る飽くなき態があった。

その間、たまに彼は箸を、大根卸しの壺に差出したが、ついに煮大根の鉢にはつけなかった。

食い終って一通り堪能したと見え、彼は焜炉の口を閉じはじめて霰の庭を眺め遣った。

あまり酒に強くない彼は胡座の左の膝に左の肘を突立て、もう上体をふらふらさしていた。※(「口+愛」、第3水準1-15-23)気をしきりに吐くのは、もはや景気附けではなく、胃拡張の胃壁の遅緩が、飲食したものの刺激に遭いうねり戻す本もののものだった。ときどき甘苦い粘塊が口中へ噎せ上って来る。その中には大根の片れの生噛みのものも混っている。彼は食後には必ず、この※(「口+愛」、第3水準1-15-23)気をやり、そして、人前をも憚らず反芻する癖があった。壁越しに聞いている逸子は「また、始めた」と浅間しく思う。家庭の食後にそれをする父を見慣れて、こどもの篤が真似て仕方が無いからであった。