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しょくま
食魔
岡本 かの子
線上閱讀岡本 かの子《食魔(しょくま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,911 字 · 74 頁
彼はこの店へ出入りをして食べ増した洋食もうまかったし、主人によっていろいろ話して聴かされた西洋の文化的生活の様式も、便利で新鮮に思われた。
鼈四郎はこれ等の感得と知識をもって、彼の育ちの職場に引返して行った。彼は書画に携る輩に向ってはデッサンを説き、ゴッホとかセザンヌとかの名を口にした。茶の湯生花の行われる巷に向っては、ティパーティの催しを説き、アペリチーフの功徳を説き、コンポジションとかニュアンスとかいう洋名の術語を口にした。
東洋の諸芸術にも実践上の必需から来る自らなるそれ等にあって、ただ名前と伝統が違っているだけだった。それゆえ、鼈四郎のいうことはこれ等に携る人々にもほぼ察しはつき、心ある者は、なんだ西洋とてそんなものかと嵩を括らせはしたが当時モダンの名に於て新味と時代適応性を西洋的なものから採入れようとする一般の風潮は彼の後姿に向っては「葵祭の竹の欄干で」青く擦れてなはると蔭口を利きながら、この古都の風雅の社会は、彼の前に廻っては刺激と思い付を求めねばならなかった。彼の人気は恢復した。三曲の演奏にアンコールを許したり、裸体彫像に生花を配したり、ずいぶん突飛なことも彼によって示唆されたが、椅子テーブルの点茶式や、洋食を緩和して懐石の献立中に含めることや、そのときまで、一部の間にしか企てられていなかっ