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くびがおちたはなし

首が落ちた話

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《首が落ちた話(くびがおちたはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,634 字 · 16 頁

青空文庫

この時、彼の眼と空との中には、赤い筋のある軍帽をかぶった日本騎兵の一隊が、今までのどれよりも早い速力で、慌しく進んで来た。そうしてまた同じような速力で、慌しくどこかへ消えてしまった。ああ、あの騎兵たちも、寂しさはやはり自分と変らないのであろう。もし彼等が幻でなかったなら、自分は彼等と互に慰め合って、せめて一時でもこの寂しさを忘れたい。しかしそれはもう、今になっては遅かった。

何小二の眼には、とめどもなく涙があふれて来た。その涙に濡れた眼でふり返った時、彼の今までの生活が、いかに醜いものに満ちていたか、それは今更云う必要はない。彼は誰にでも謝りたかった。そうしてまた、誰をでも赦したかった。

「もし私がここで助かったら、私はどんな事をしても、この過去を償うのだが。」

彼は泣きながら、心の底でこう呟いた。が、限りなく深い、限りなく蒼い空は、まるでそれが耳へはいらないように、一尺ずつあるいは一寸ずつ、徐々として彼の胸の上へ下って来る。その蒼い気の中に、点々としてかすかにきらめくものは、大方昼見える星であろう。もう今はあの影のようなものも、二度と眸底は横ぎらない。