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くびがおちたはなし
首が落ちた話
線上閱讀芥川 竜之介《首が落ちた話(くびがおちたはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,634 字 · 16 頁
僕はそれをこんな風に想像する。あいつは喧嘩をしている中に、酔っていたから、訳なく卓子と一しょに抛り出された。そうしてその拍子に、創口が開いて、長い辮髪をぶらさげた首が、ごろりと床の上へころげ落ちた。あいつが前に見た母親の裙子とか、女の素足とか、あるいはまた花のさいている胡麻畑とか云うものは、やはりそれと同時にあいつの眼の前を、彷彿として往来した事だろう。あるいは屋根があるにも関らず、あいつは深い蒼空を、遥か向うに望んだかも知れない。あいつはその時、しみじみまた今までの自分の生活が浅ましくなった。が、今度はもう間に合わない。前には正気を失っている所を、日本の看護卒が見つけて介抱してやった。今は喧嘩の相手が、そこをつけこんで打ったり蹴ったりする。そこであいつは後悔した上にも後悔しながら息をひきとってしまったのだ。」
山川技師は肩をゆすって笑った。
「君は立派な空想家だ。だが、それならどうしてあいつは、一度そう云う目に遇いながら、無頼漢なんぞになったのだろう。」
「それは君の云うのとちがった意味で、人間はあてにならないからだ。」
木村少佐は新しい葉巻に火をつけてから、ほとんど、得意に近いほど晴々した調子で、微笑しながらこう云った。