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かけおち
駈落
佐左木 俊郎
線上閱讀佐左木 俊郎《駈落(かけおち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,287 字 · 13 頁
あんなに働いた爺さんだったけれども、いくら若い時働いたことを、今の若い人達に自慢して見たところで、爺さんは、金鵄勲章も、恩給証書ももらっていなかったから。
「今の奴等あ、ろぐろぐ稼ぎも出来ねえで、贅沢べえぬかしゃあがって。――機械でねえげ、仕事はあ出来ねえもんだと思ってからあ。贅沢べえぬかしゃあがって……」
爺さんは口癖のように言うのであった。若い人達は、爺さんのその言葉を嫌った。菊枝は、爺さんのその言葉を、嫌っていたし、怖れてもいた。彼女の要求がいつも爺さんのその言葉で打ち砕かれた。
菊枝の母が、若い年で死んだ時などは、村中に「あの爺つあまに追い廻されちゃ……よっぽどの稼人だって死んでしまうべさ!」という噂が立ったほどだった。
併し、爺さんも弱ってしまった。今は、怠け者の、口喧しい爺さんとしての存在でしかなかった。伜や孫娘のすることに、うるさいほど嘴を入れるだけで、しょぼしょぼと、薄暗い室の中に燻っていた。
三
夜明け前から出掛けて行った父親の春吉が、山畑でひと仕事して帰って来た時は、大百姓の(それは大きな自作農であった)片岡の家に、日傭に行くので、先に食事を始めた菊枝が、ちょうど食事を終わったばかりのところだった。