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まぞう
魔像
林 不忘
線上閱讀林 不忘《魔像(まぞう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 頁
この人は、荒木又右衛門一門の血統で、流石に血筋は争えない。剣を取っては、番部屋第一の名があったもので、年齢は四十五、六、肚も相当に据わった、まず、御書院番士中では錚々たる人材だ。その、荒木陽一郎が、祖先譲りの朗快な声で――と言ったところで、荒木又右衛門の声のことが記録に残っているわけでもないが、豪傑だったから、声も偉そうだったに相違ない。とにかく、決して豪快な声ではなかったと証明出来ない以上、どんなに豪快な声だったと言ってもさしつかえあるまい――ところで、子孫の荒木陽一郎は、又右衛門ほどの傑物ではなかったが、声は、素晴しく強そうなのだ。ラジオの拡声機で聞く猛獣の咆哮のようだ。
「神尾喬之助ッ! 面を上げろ」
あんまり上品な言葉遣いではない。が、もっとも幾分昂奮しているからで……。
しかし、襖のまえに、畳にへばり付いている人影は、身うごきもしないのだ。顔を隠すように俯伏せた額部に、燭台の燈が蒼白く反映している。
元旦のあの時、騒ぎになる寸刻前と同じ情景だ――。
一同は、グルリと遠巻きにして立っているのだが、やがて、保利庄左衛門がズカズカと出て行って、その、ひれ伏している神尾喬之助の前に蹲踞んだ。