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めいせつじじょでん

鳴雪自叙伝

内藤 鳴雪

線上閱讀内藤 鳴雪《鳴雪自叙伝(めいせつじじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,693 字 · 377 頁

青空文庫

海路はもう内海通いの汽船があったけれども、凡てが中国沿岸から、九州方面へ通航するばかりで、四国路は多度津の金比羅詣りに便する外どこへも寄らない。従ってわが郷里の三津の浜へは無論寄らないのだが、特に頼むとちょっと着けてはくれるという事を聞いたので、遂に何とか丸という船に便乗した。乗客も随分多くて、中には東京帰りの九州書生などもいて、詩吟や相撲甚句などを唄って随分騒しかった。三津の浜へ着いたのは、夜半であったが、私と今一人の客を艀へ乗せて、それが港内へまで廻るのが面倒だからといって、波止の石垣を外から登らせて追い上げられた。少し不平であったけれども、もともと特別の便乗なのだから仕方がない。その夜は三津の浜に一泊して翌日帰宅した。

私の宅は以前の如く堀の内の士族邸だが、召使なども凡て暇をやって、家族で炊事もしている。父は最前もいった如く邸内の畠打をしていたが、その外綿繰りといって、実の交った綿を小さな器械を廻してそれを抜き、木綿糸を績ぐ下地をする賃仕事がある、それをセッセとしていた。昨日まで家老に準ずる重職をしていたものが、そんな有様なのには、私も少し驚いた。