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めいせつじじょでん

鳴雪自叙伝

内藤 鳴雪

線上閱讀内藤 鳴雪《鳴雪自叙伝(めいせつじじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,693 字 · 377 頁

青空文庫

この屋敷には留守居という者とその下役が居る。私の藩では、他に産物は無いが、米がかなり沢山出来るので、藩の士民が食べる外に、沢山余る。それを藩外へ売出して、上下共に費用を弁じたものである。年貢の納まるまでは百姓の手で米を売ることは出来ぬので、それが済めば勝手に売出すことが出来るのである。藩は藩の手で船で大阪まで積んで行き、この留守居の手で、大阪相場を聞合わせ、出入の商人に売渡す。これが藩の財政上のおもなる事件になっていた。

こういう事の外に大阪の留守居には別に肝心な役目があった。それは借金の事である。大名が金を借りる時には必ず大阪の豪商に借りた。その談判は必ず藩の留守居役がやったのである。これはどの藩でも同様であった。各藩の収入では普通の参勤交代等の費用を弁じ得るだけで、その他の臨時費になると、とてもその収入では出来なかった。それに太平が続いて、段々世が贅沢になり、物価が騰貴するに従って、いよいよ豪商に頼る必要頻々と起って来た。借りて、元利を幾分かずつ支払って行く大名には、豪商も直ちに需に応じたが、返し得ない貧乏藩が沢山あるので、そういうのに対しては、たやすくは応じなかった。