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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
線上閱讀小金井 喜美子《鴎外の思い出(おうがいのおもいで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,675 字 · 254 頁
遅くなるからと引返して、左の道を急ぎました。
それから程なく、往来から家の中の見えるのはよくないからと、格子の前に白い日覆のような物を掛けるようになりました。
それらの二階建の家に混って、大きな仕出屋がありました。大勢の男女が働いています。これは貸座敷ばかりへ食物を入れるので、ここらでは台屋といいました。食物は足附きの大きな台に幾つでも並べて、被いなどはしないで、それを男が頭の上に乗せ、柄の長い提灯で足許を照しながら、さっさと歩きます。古い絵などにあるのと全く同じで、珍しく思いました。その食物を台の物というのです。
薬師様が近くなると、ぞろぞろと人が続いて、あたりにはカンテラの油煙が立昇ります。雨も降らないのに、恐ろしく大きな傘を拡げて、その下で飴屋さんが向鉢巻で、大声でいい立てながら売っています。「飴の中から金太さんが飛んで出る。さあ買ったり買ったり。」
白い飴の棒を刃物でとんとんと切りますと、おどけた顔が切口に出るのを面白く見ていました。
傍に金魚屋がいます。大きな小判形の桶を幾つか並べた中に、金魚が沢山泳いでいます。中でも丸々と太って、尾が体の倍ぐらいもあるのはリュウキンというのでしょう。