輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
線上閱讀小金井 喜美子《鴎外の思い出(おうがいのおもいで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,675 字 · 254 頁
」
祖母はつくづくいわれました。森は小藩の医者の家で、質素に暮していたのでしたから、東京へ出るといっても、少しの荷物しかありません。家内中戦にでも出るような意気込なのでしたから、お雛様を飾ろうなどとは、夢にも思わなかったのでしょう。
「お兄さんにお雛様を画いておもらいなさい」といわれてお願いしましたが、「そんな絵は画けないよ」といわれました。それでもとうとう画いてもらったのを壁に針で止め、桃の枝を探して生けましたら、母が豆妙を造って下すったので、やっと御雛様らしくなりました。
庭の菖蒲畑の花が綻ぶ頃でした。私は新しい単衣を造って下すったのを著て見ました。そのままじっとしてないで、縁先の下駄を突かけて、飛石づたいに菖蒲畑の傍まで来ましたら、生垣を潜って大きい犬が近寄って来ました。その時つぶてが、いきなり縁先から飛んで来て、私に当ったと思ったら、赤インキの壺でした。蓋が取れて、インキは私の上前一ぱいにかかったのです。「あ」という声が三個所から起りました。一番には私、次は縁に立ってこっちを見ていられた母、次は縁で机に向っていられたお兄様でした。私は呆れて泣きもしませんでした。