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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
線上閱讀小金井 喜美子《鴎外の思い出(おうがいのおもいで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,675 字 · 254 頁
大分本人の健康もわるくなったらしく、宅へも引子ばかりよこしました。大乗寺への出入もやめたそうで、いつか田舎へ帰ってしまいました。僅か一、二年の間に変れば変るものと、威勢のいい大声を思い出します。
白山上から坂下の方へ見渡される一町ばかりの処に、古本屋が左右に二、三軒ありました。白山上にあるのはかなり大きく、窪川といって、歌集などのよく出ている家でした。私は買物に出た帰りなどに寄って見ます。欲しいと思う本など聞きますと、「ちょっと待って下さい」と、裏のお寺の中に物置でもあるのでしょう、気軽に行って見てくれました。坂を下りた処の店は狭いのですが、年を取った頭の禿げた主人が、にこやかで気安いのでした。そこへもちょいちょい立止りました。あとはずっと奥深く這入って見るような店構でしたから、寄った事はありません。そこらは鶏声が窪といいました。近年にそこへ出来た鶏声堂という店は、高島米峰氏が出していられて、新刊書や教科書類を扱うようでした。何んでも学生たちが立見をして本を汚すと、叱られるとのことでした。そこは曙町の停留所のすぐ傍、東洋大学の構内へ喰い込んでいました。