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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

線上閱讀小金井 喜美子《鴎外の思い出(おうがいのおもいで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,675 字 · 254 頁

青空文庫

いつも先生のお世話になっているのですから」と申出ました。

父は笑って、「それは有難う。立派な御馳走ではないが、お酌がよいとお客が喜ぶだろうから」といいました。

小六は早くから、少し年増の芸者と十二、三の雛妓と一緒に来て、お茶を出したりお膳を運んだりするのでした。きっとこの人たちは同じ家にいるのでしょう。お客たちは上機嫌で、「いつも小六さんは美しい」とか、「小六さんのお酌は有難い」とかいいます。多くは小六と雛妓とが踊って、年増が弾いたり、歌ったりするのです。大分お酒が廻ったと見えて、妙な声をして歌うお医者もありました。父はお酒はいけないのですから、隣の席の質屋の隠居の頻りに盆栽の話をして、折々料理に箸をつけては、にこにこしていられます。私もそっと出て来て、母の後からその座の様子を見ていました。その内にお兄様は腰を立てて、「甚だ失礼ですが、今夜は拠ない会があって、ちょっと顔を出さねばなりませんから、中座をいたします。どうぞ皆さん『雨しょぼ』でも踊らせてゆっくりお過し下さい。」

そういってお立ちになりました。車は早くから戸口に待っていたのです。

「若先生のお許が出たのだから、さあ、さあ、踊ったり、踊ったり」