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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
線上閱讀小金井 喜美子《鴎外の思い出(おうがいのおもいで)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 127,675 字 · 254 頁
がやがやいう子供たちの声を耳にして、気が附きますと、少しの明き地に大勢集って、地面に白墨で何か書いて遊んでいたのを、うっかり踏んでしまったので、「御免なさい」と詫びました。
吉祥寺の横手の門まで来ると、かなりな家の葬式でもあるのでしょう、今日は開放しになっていて、印半纏の男たちが幾人か立廻っていますし、人込を透かして、参道の左右に並べた造花や放鳥らしいものがちらちら見えます。通りへ出ると、表門の前には車が並んで、巡査が交通整理をしているようです。通りを横切って曙町に這入ります。会葬者らしいのがまだ続いて、寺の門へ向って行きます。左側に大きな材木屋があって、種々の材木が高々と並んでいます。人の噂には、もとこの辺で草取をしていた老婆があって、それが貯蓄してこんなになったのだといいます。その孫ででもありましょうか、今の主人らしい人には、卑しい様子もありません。
家に帰ると、出迎えた女が、「大変お早ようございましたね。お留守でしたか。」
「いいえ」とばかり答えて上るなり、そのまま座敷の縁側に坐って、ぼんやり庭を見ていました。南さがりになっている芝生に、色の褪めた文字摺があちこち立っています。