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おうがいぎょしとはだれぞ
鴎外漁史とは誰ぞ
線上閱讀森 鴎外《鴎外漁史とは誰ぞ(おうがいぎょしとはだれぞ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,099 字 · 12 頁
に塗れしむるであろうと云った。この言はある意味より見れば、確に当った、否当り過ぎた位だ。時代は啻に一つの大議論家を出したのみではなくて、ほとんど無数の大議論家を出して止む時がない。即ち新文学士の諸先生がそれである。試みに帝大文学の初の数十冊を始として、同時に出た博文館の太陽以下の諸雑誌、東京の諸新聞を見たならば、鴎外と云う名に幾条の箭が中っているかが知れるだろう。鴎外という名はこの乱軍の間に聞こえなくなった。鴎外漁史はここに死んだ。読者は新年の初刊を看てここに至る時、縁起が悪いと云うかも知れない。しかし初春の狂言には曽我を演ずるを吉例としてある。曽我は敵討で、敵を討てば人死のあることを免れない。況や鴎外漁史は一の抽象人物で、その死んだのは、児童の玩んでいた泥孩が毀れたに殊ならぬのだ。予は人の葬を送って墓穴に臨んだ時、遺族の少年男女の優しい手が、浄い赭土をぼろぼろと穴の中に翻すのを見て、地下の客がいかにも軟な暖な感を作すであろうと思ったことがある。鴎外の墓穴には沙礫乱下したのを見る外、ほとんど軟い土を投じたのを見なかった。ただ一ついくらか手軟だと思ったのは、ほととぎすの記者が、鴎外も最早今まで我等に与えた程のものをば与うることを得ぬであろうと云ったくらいなものだ。