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おうごんかめん

黄金仮面

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《黄金仮面(おうごんかめん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,357 字 · 287 頁

青空文庫

先ず三好執事が持参の鍵を以て、入口の大扉を開くと、侯爵を先頭に、大使一行、美子姫、三好老人の順序で、館内に這入って行く。

土蔵風の建物で窓が小さい為に、館内は昼間でも電燈が輝いている。高い天井、冷え冷えとした空気、防虫剤のほのかな匂い、その中に立ち並ぶ異形の仏像、今にも動き出すかと怪しまれる甲冑の列、様々の刀剣類、千年の夢を通わす絵巻物。何とやら肌寒き感じである。

侯爵は先頭に立って、一歩美術館に足を踏み入れた時、異様な恐怖を感じないではいられなかった。先刻小雪が見たという怪しのものと、場内にニョキニョキ立並ぶ、不気味な仏像とが、奇怪なる聯想を生じて彼をおびやかしたのである。

「若しや怪賊は、この貴賓来訪の時を待構えていたのではあるまいか。どういう手段かは分らぬ。だが、この虚に乗じて、美術館内の宝物を盗み出そうと目論んでいるのではないだろうか」

そう思うと、侯爵は、小暗い物蔭が気になって、伯爵への受け答えさえ、おろそかになり勝ちであった。

だが、ルージェール伯は、思いもかけぬ素ばらしい観賞家であった。彼は日本支那の美術史にも詳しく、通訳官を通じての批評、悉く肯綮に当るばかりでなく、最も侯爵を喜ばせたのは、幾百万の金銭にも換え難き名宝として珍蔵せる、藤原時代の極彩色仏画「閻魔天像」