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こうちょうのなげき

黄鳥の嘆き

甲賀 三郎

線上閱讀甲賀 三郎《黄鳥の嘆き(こうちょうのなげき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 40,792 字 · 82 頁

青空文庫

野村が通知されなかった事についていうと、重武は例の人を外らさない調子で、

「通知はどちらへもしませんでした。今見えている方は、みんな夕刊を見てお出になったのです。実は新聞の方も極力運動したんですが、どうも防ぎきれませんでした――」

そこで野村は委しい話を聞く事が出来た。

今朝十時頃、いつもより眼覚めるのが遅いので、小間使の千鶴が寝室を覗いて見ると、重明は半身を床の外に乗り出して、両手を大の字なりに延ばしていた。どうも様子が変なので、

「御前さま、御前さま」

と二三回呼んで見たが、一向返辞がない。

それで、恐々側に寄って見ると、彼女は退け反るように驚いた。重明は死んでいたのだった。

それから大騒ぎになった。

早速、かゝりつけの太田医学博士が駆けつけて来たが、死後既に十二時間位経過して、昨夜の十時前後にもう縡切れているので、いかんとも仕方がなかった。十時前後といえば、恰度重明が寝に這入った頃で、彼は寝室に這入ると、直ぐ催眠剤を取る習慣になっているので、昨夜も確かにその通りにした形跡があった。

催眠剤は太田博士が調製するので、博士は用心して、二日分宛しか渡さなかった。