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くろだじょすい

黒田如水

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《黒田如水(くろだじょすい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 163,639 字 · 325 頁

青空文庫

ひいてはまた、官兵衛というと、その名を聞いただけでも、すぐ顔色を変えて、ぐらつき出す主人政職をも、そのことばを以て、叱咤し、牽制しているのでもあった。

その政職も、宿老たちも、

(官兵衛が帰って来たからは、必ずや姫路の城に拠って、父宗円の兵力と、近郷の味方を糾合し、一面、浮田家にも助力を求めて、この御着を攻めるだろう)

と、その行動を必然と察していたのである。

ところが、その朝、早馬に鞭打って、飛び込むように、城門へ入った一物見のことばは、彼等の予察をまったく覆したもので、

「官兵衛は、昨夜姫路に着きましたが、なぜか姫山の城には入らず、町中の目薬屋、与次右衛門の家に泊り、やがて今朝は、この御着へ向って来るらしい様子に窺えます」

と、いうのであった。

「何。――直接これへ来ると? してその人数は、どれほどか」

十分、戦備は固めているものの、老臣たちは、ひとしく色を作して、早口に訊ねた。

物見はそれに答えた。

「ひとりです。ただ一騎です」

「えっ。官兵衛一人だと?」

「されば、小者も連れておりません」

「はてな?」

何か、鮮やかに背負い投げでも食わされたような顔つきである。