輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
くろゆり
黒百合
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《黒百合(くろゆり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 78,148 字 · 154 頁
「ええ、」といって学士も立った。
「可恐しい早さだ、放すな!」と滝太郎は背をお雪に差向ける。途端に凄じい音がして、わっという声が沈んで聞える。
「お雪! お雪。」
学士も我を忘れて助を呼んだのである。
「あれ、若様、拓さんは、拓さんは目が見えません。」
「うむ、」
「助けて下さい、拓さんは目が見えません。」
「二人じゃあ不可ねえや、」
「内の人を、私の夫を。」
「おいら、お前でなくっちゃあ、」
「厭、厭ですよ、厭ですよ、」と、捕うる滝太郎の手を摺抜ける。
「だって、汝の良人なら、おいらにゃあ敵だぜ。」
「私は死んでしまいます。」
「へへ、駄目だい、」と唾するがごとく叫んで、滝太郎は飛んで拓に来た。
「滝だ、大丈夫だ。」
「お雪には義理があるんです、私に構わず、」といって、学士は身を退って壁にひたりと背をあてた。
「あれ、拓さん、」とばかり身を急るお雪が膝は、早や水に包まれているのである。
「いや、いけない、」と学士は決然として言放った。
滝太郎は真中に立って、件の鋭い目に左右をして瞳を輝かした。
「ええ二人ともつかまんな。構うこたあねえ、可けなけりゃ皆で死のう。」
雨は先刻に止んで、黒雲の絶間に月が出ていた。