Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
Read あさひの鎧 (あさひのよろい) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 239,520 characters · 475 screens
恩典に、浴しましたにございます」
「なるほど」
と云ったのは村上坊こと、村上彦四郎義光であった。
「それに十津川の郷民とくると、武勇絶倫ということでござるな」
「さようで」
と兵衛は深く頷き、
「保元の乱におきましては、指矢三町、遠矢八町――などと呼ばれる騎射の名手が、南都興福寺の信実だの玄実だのの、荒法師ばらに召し具されまして、新院方にお味方し、比類ない武勇をあらわしましたそうで」
「いったいに郷民の性質が勤厚篤実に見うけられまするな」
こう云ったのは片岡坊こと、片岡八郎その人であった。
「さようで」
と兵衛は自分の郷民を、そんなように真面目に褒められたので、嬉しそうにまた頷き、
「平生は芋野老などを掘りまして、乏しく生活しておりますにも似ず、目前の利害などには迷わされず、義を先にし節を尚び、浮薄のところとてはございません。自慢するようではございまするが、頼み甲斐ある人間どもの巣、それが十津川でございます」
ひとしきり風が出たと見えて、庭の松の木から落ちるらしい凍てた、雪の音がした。
と、狐の啼く声が館を巡って数声きこえ、山国の冬の夜の荒涼さをしばらく聞く人の心に与えた。