Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Read 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 169,810 characters · 345 screens
動悸が堪え難い程はげしかった。咽喉の処に、何かかたまりのようなものがつまって居るようであった。あえぎながら、私は眼を開いた。真昼の、土の臭いが鼻をうった。爆音はようやく遠ざかった。
のろのろと立ち上り、埃をはたいた。手拭いで汗をふきながら、梢の間から空をすかして見た。飛行機は、もはや遠くに去ったらしかった。私は歩き出した。
此の前、見張台でグラマンを見たとき、私は狼狽はしたけれど、恐いとは思わなかったのだ。今、私をとらえたあの不思議な恐怖は何であろう。歯の根も合わぬような、あのひどい畏れは、何であろう?
此の数日間の、死についての心の低迷が、ひびのように、私の心に傷をつけたに違いなかった。死について考えることが、生への執着を逆にあおっていたに違いなかったのだ。見張台に近い小径を登りながら、私は、唇歪めて苦笑していた。
(遺書を書こうという人間が、とかげのように臆病に、死ぬことから逃げ廻る)
自嘲が、苦々しく心に浮んで来た。
見張台に登りつめた。見渡しても、例の見張台の男は見えないようであった。ふと栗の木のかげに、白いものが見えた。
(まだ、待避をしているのか?)